留年289日目
76日後に進路決定する限界医大生
本日は2限だけであるが、朝から大学食堂の掃除のバイトが入っていた。
試験まで残り10日ほど、講義も酣となっていた。
留年した身なので後に控えるは本試験1つと再試験2つである。昨年よりは気楽なものだが気を抜けたことは一瞬もない。
そんなこんなで午前中に講義が終わり、午後は大学の多目的室で勉強をして過ごしていた。
夕方からはオンライン家庭教師のバイトが2件入っていたため、そのまま大学の多目的室で仕事を恙無くこなす。
1人は浪人生で共通テストの結果次第で志望校が変わると聞いていた。想定していた志望校は受けられそうにないと溢していた。
その次は高校入試を控えた中学3年生である。
この中学3年生、私が登録しているオンライン家庭教師に入会したのが昨年11月、指導開始が昨年12月という空前絶後の泥縄っぷりを発揮しており、色んな意味で期待の大型ルーキーだった。
その生徒の親も親で全く連絡がつかず、「受験やる気あんのかねこの人ら」と私に思われるレベルである。無職4年やってた人間にそう思われる時点で相当なレベルである。
そんな感じで中学数学はおろか小学校の算数レベルから危うい中3生に数学を教える。
事前に志望校の過去問題をデータで送ってもらっていたため、それをタブレット端末で見ながら指導していたところ、指導中に一通のメールが入った。
なんと全く連絡のつかない生徒の親からであった。簡潔にまとめると、以下のようなことが書いてあった。
①滑り止めの併願校の入試が来週にあるので、今日の授業ではそれを指導して欲しい(過去問添付)
②2月分の月謝は払ってないけど2月も指導して欲しい
③なんなら高校入ってからも指導して欲しい
……百歩譲って②と③はまだ許せる。「詳しい話は家庭教師の事務局に聞いてくださいね〜」でジ・エンドだ。
しかし①はなんなんだ。前から「泥縄親子」と影で呼んでいたが、これじゃあ
「泥棒が家にお見えになってからAmazonで縄をポチった」レベルじゃないか。
メールが届いた時点で既に指導開始から規定時間まで半分以上経っている。残り幾許かで何をしろと。しかも滑り止めの併願校の問題を今初めて見たぞ。
とりあえず残りの時間でまあこちらができるベストは尽くしたが、流石にこれは事務局に怒りのお問い合わせをしても許される案件のような気がした。
高校生になってからも指導して欲しいなら5倍の額の金を積むんだな。
そんなこんなで大学の多目的室から出たのは午後10時。警備員に追われて外に出ると、まあまあ寒かった。
そのままチャリを漕ぎ、一路家を目指す。
大学校内の狭い歩道を通っている折、服のポケットのジッパーが開いていることに気がついた。このままではポケット内の小物が落ちるやもしれないと右手でチャリを運転しつつ左手でポケットのジッパーを閉めようとする、も思いの外閉まらず、歩道の段差(車両横断用に歩道の高さがなくなっているところ。まあまあな落差がある)に差し掛かった。
片手でのチャリの運転ということもあり、段差の始まりでバランスを崩す。慌ててブレーキをかけようにも時既に遅し。元の高さに戻った歩道から自転車ごと体が車道に投げ出された。
右腕に強い衝撃。
兎にも角にも起き上がる。
ヘルメットのおかげか、右腕で咄嗟に庇ったからか。顔にも怪我はないし頭を打ってもいない。ただ肘と肩がクソ痛い。
自転車はしばらくギアが噛み合っていなかったが、チェーンを直すと走行できるようになった。
右肩は痛かったが運転はできたため、這々の体で帰宅する。服を脱ごうにも腕が痛過ぎて脱げない。
四苦八苦して防風・防水パーカーを脱ぎ、下に着ていた長袖も脱ぐ。ヒートテックのタートルを捲ると、肘には擦り傷があった。
肩は動かすには痛みが伴い、腕はマトモに挙げられない。だがペンは使えるし拳は握れる。
恐らく骨折はしていないだろうが、生まれてこの方骨折とかそういうのとは無縁の人生を送ってきているためよくわからない。
風呂に入ろうにも防水の大きめの絆創膏がないので肘の傷が沁みたらどえらいことになりかねないし、何よりこれ以上服を脱げない。横になろうにも右腕が痛すぎる。
明日朝イチに病院に行くことだけ決めて、取り敢えずなるべく座っているか立っているかして、どうにもならなくなったら痛みはあるが横になることにする。