無職860日目
今日の一言
自分を言語畑出身の人間だと称するのは烏滸がましいことこの上ないので、ただの「外国語学部を卒業しただけの無職文系」と言うことにしているが、見知らぬ言語を見かけた時に類推したりするのは楽しいと思っている。
多分元々「類推」や「分析」が好きな気質なんだろうが、そういうのは役所仕事ではまあ役に立たないわけであり、その点もあって退職したのは正しい選択だったと思っている。そのあと割と長期間無職になるとは予測していたようで予想していなかったけど。
言葉の通じる外国にも、通じない外国にも出掛けたことがあるし、場所によっては英語表記もない中で飯を頼んだり現地のスーパーで飯を買ったりしたりしてきた。見た目からこれは私の知ってる味なのかどうかを考えたりもしたし、文字が読めそうな場合はそれを読んで発音や綴りから何の食材なのかを考えたりもした。外れてもそれはそれというやつだ。
その結果フィンランドの宿で一番最初に覚えたフィンランド語の接尾辞は “-tön”(〜なしとかそういう意味らしい。なんかのビスケットにGluteenitonという札がついており、グルテンフリーであることを理解した。ちなみに超ボソボソだった)となり、炭酸でない水を求めて2日、喉が乾きまくった結果フィンランドの自販機の水を「これは高いしなんかそれっぽい単語書いてあるから普通の水やろ」と思って手を出したら思いっきり炭酸水だったので絶望し1 、フィンランドのスーパーで量り売りのジャガイモとチーズのクリーム煮みたいなやつを買って11月で氷点下という恐ろしい気温でもホクホクで飯を食え、ドイツでえびフィレオみたいなバーガーを頼もうとしたら私のドイツ語の発音がアレだったのか向こうの移民の方のドイツ語リスニングがアレだったのか2 、エビフライみたいなやつが沢山入ったものになり(美味かった)、泊まっていた宿(木製のエレベーターらしき何かがあってビビった)の朝飯の給仕のおばちゃんにドイツ語で色々聞かれたら困るから毎日オレンジジュースで統一し(そのために覚えたドイツ語はSaftだった)、オランダのフードコートっぽいところでスープに添えられた茶色い板を「ウエハースのチョコレートがけみたいなもんやろ」と思って注文したらウエハースでもチョコでも何でもない謎の板(なんか肉系。レバー刻んで固めたみたいな味)だったりと様々な経験を積むことになった。
そんなこんなで日本でも外国語表記の看板やアナウンスを見たり聞いたりする際に「これは発音も似た感じなのか?それとも意味が似た感じなのか?」などと考えたり、バスの運転手の当意即妙な英語に舌を巻いたりしてきた。
しかし世の中には「日本語と英語以外の表記が公共機関等でなされるのを許せない人間」というのが存在するらしい。どんな排外主義者だよと思うが、その手の人間には文系社会人の頃にエンカウントしたことが多々あったので「相変わらずこの国も末期だなぁ」と思うばかりである。彼ら彼女らからすれば「他の言語を見て類推や予測をしてみる」という私の所作の方が悪魔の所業なのだろう、知らんけど。
何はともあれ、今はコロナ禍のためになかなか海外に出かける機会はないかもしれないが、ちょっと旅行とかしたときにこれはどういう意味なんだろう?と思ったり考えたりすると楽しい(しサバイブするのに役立つ)というだけの話である。