走れ無職

鯉王は激怒した。必ず、この短時間労働(アルバイト)を辞めねばならぬと決意した。鯉王には小売業の現況がわからぬ。鯉王は無職の文系である。笛を吹き、勉学を楽しんで暮してきた。けれども理不尽な業務指示に対しては、人並みに敏感であった。きょう明け方過ぎ鯉王は家を出発し、坂を上り山の上に辿り着き、この勤務先にやってきた。鯉王には立派な社会的身分も、職歴も無い。配偶者も無い。一人暮しだ。

参照:太宰治 走れメロス|青空文庫

今日の一言

これ以上続けるのも難易度が高いため通常モードに戻る。

今日は土曜だ、しかしアルバイトはある。勤務先につき、業務指示の紙を見る。朝からサーモン切る新メニューに、うどんと寿司のセット作って尚且つ22貫入りというどこのパリピが買うんだよというような寿司を作る必要があるらしい。そこに指示が入る。「手巻き寿司もよろしく」!

残念ながら手巻き寿司はほぼやったことがない。まだアルバイト始めて実勤務日数15日、実労働時間は70時間もいってない身である。「初めてやる業務になりますが」一応但し書き的な念押しをしておいた。気分的には「CAUTION!ここから先、18歳未満は閲覧禁止です」だ。

今までも本ブログで書いてきたことだが、「初めてやる作業は誰しも時間がかかる」。そして「教える人の時間も取ることになる」。これは本ブログの読者が習う側になっても教える側になっても覚えておいてほしい。有機物の構造決定に練習がいるように、回転体の体積を求めるための積分を習った当初は時間がかかるように!練習も要らず時間もかからないのは一握りの天才だけであり、私はそれには該当しない。

そんなこんなで慣れぬ作業をする。遅々として進まぬ作業、針ばかり進む時計、うまく切れないサーモン、解凍しようにも見当たらないうどん、存在しない資材、やたら横から口を出すパートのドンみたいな人。後々に備えて置いていた天かすは勝手に処分され、初見作業をやっていたら「この方が勝手に始めました」の発言をくらう。

上に立つ人の基本教養として「初見作業は時間がかかる」「教える人の手も取ることになる」「そもそも仕事に慣れていない場合、備品の位置や機器の操作とかもわからないためその分の時間もかかる」の3点は知っておく必要がある。然しどうもわかってなさそうであったので、「初見の作業に時間がかかるのはわかる!あ、わからない!OKじゃあそこから説明しますかね!」みたいなことを多分私が正規の社員なら言ってたと思う。アルバイトなので言わんし言うことなくやめるけど。

備品を洗いながら3月下旬くらいからずっと決意していた「このバイト辞めるか」を本気で実行しようと思った。民法628条なんか知ったこっちゃねえぜ。そもそも実労働時間の累計が3日も行ってない人間に請求する損害賠償なんかねえだろ。そして訴訟になってもこっちには勤務中の録音があるのだ、問題ない。

店長に改めて「このアルバイトを辞めます」と伝えたが、「もうちょっと頑張ってみよう」とのことだった。君らのいう「もうちょっと」って何なんだよ。試用期間が終了するまでか?

今までのバイトは「辞めます」「はーい」みたいな感じで辞められたのに今回に限ってここまで引き止められるのは何故なのか。しかも試用期間だぞ。いつでも首切れるじゃねえか。そんなに仕事の速い人が好きならそういう人を雇え。

今まで民法628条にも人間関係にも配慮して(短期間で去る場合は尚更)穏便に済ませようと腐心してきたが、埒があかないため、少し強硬策に出ることにする。

文系社会人を経ての無職。からの学生。 本業は医学生、副業は無職文系。

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