数日前に買い出しに行き、3回目のK〇C風フライドチキン製作のために鶏胸肉を購入した。調理の際には鶏胸肉についている皮を食さないために肉から剥ぎ取り、食品トレーと一緒にレジ袋に廃棄した。

普段は今まで貰っていたレジ袋をゴミ袋代わりとして使い、ゴミ袋が一杯になったら口を縛って市指定のゴミ袋(有料)に詰め、それが複数積み重なって市指定のゴミ袋が一杯となったら現在の根城のゴミ置き場に持っていくようにしている。また、今年の春から自宅にいることが格段に増えたため、市指定のゴミ袋も大きなものを購入し、一度にまとめて捨てられるようにしていた。一人暮らしでそんなにゴミが出るタイプでもないため、大型ゴミ袋なら3週間分くらいのゴミを入れられるのである。経済的だししばらくこの方針で行くか、と思い、通常のゴミ袋は購入せずにいた。

夏場の生ゴミの異臭感は半端ない。台所とリビングがつながっており、玄関とそれらが扉で隔てられているタイプの部屋であるため、台所で出た生ゴミ類ををレジ袋に入れ、そのままにして2日ほどすると異臭がえげつないレベルとなっていた。市指定の大型ゴミ袋にそのまま入る大きさのレジ袋であったため、口を縛るのも面倒であったので大型ゴミ袋にレジ袋をそのまま突っ込み、玄関に放置した。

折しも気温は連日30℃を超える日々が続いており、暫くするとリビングでやたらコバエが見られるようになっていた。原因は生ゴミだろうと思っていたが、市指定の大型ゴミ袋になるだけ沢山詰め込んだ方が経済的である。そして私は無職であるためなるだけ経済的であることを優先せねばならぬ。異臭程度なら耐えられるし捨てるにしてももう少しゴミが一杯になってからにしようと考えていた。コバエ程度なら素手で潰せるし。

そして今日、あまりにコバエが私に集ってきた。思わず御堂筋くんになるところだった。コバエが見られるにしてもこうも私の周辺にいるのは怪しいのではないかと考え、玄関に置いてある市指定の大型ゴミ袋(勿論中には生ゴミが入っているし、土曜に掃除した際のゴミも入っている)を見に行った。

数日前(玄関にゴミ袋を置いたあと)から玄関の床に段ボールくずのような小さな茶色い点が見られていた。気にはなっていたが、玄関には資源ゴミ回収の日まで保管された段ボールも置いていたので、そこから出たのだろうと考えて、気にも留めず放置していた。それが今日見たら段ボールは増えていないのに段ボールくずのようなものは異様に増加しているのである。眼鏡のおかげで遠距離と近距離は問題なく見えるのだが、中距離――例えば立っているときの自分の目線の高さから床まで――はぼやけたようにしか見えない。そして見えないためにしばしばいろいろと見落とす。しかしこの夥しさはおかしい。玄関にしゃがんで段ボールくずのようなものを見てみると、それらは全てコバエの卵であった。独り言もクソもなく、「うっっっっっわ」という声が出た。数個とかいう規模ではない。数十個はありそうである。エアコンの冷気の届かぬ玄関の熱気。生ゴミの異臭。そして眼前のコバエの卵の数々。最早狂気でしかない。ラヴクラフトもびっくりだ。

ふと右手を見ると、親指に小さな白い何かが這っていた。これは紛うことなき蛆虫である。「腐った肉片に蛆が沸くってよく聞くけどホンマやったんやな」と頭の片隅で冷静に考えながらも、その蛆虫を指で潰した。

素早くリビングからフローリングクリーナーを持ってきて玄関一面を無心にコロコロする。フローリングクリーナーの表面が茶色になるほど多くのコバエの卵がついた。即例の市指定の大型ゴミ袋に廃棄した。次はクイック〇ワイパーだ。適当なウェットシートでガンガン玄関の床を拭く。それが終わるころにはコバエの卵は一掃されており、元の白い床となっていた。フローリングクリーナーの表面にあったコバエの卵の中身が殆ど空だったことを鑑みるに、既に成虫となっているに違いない。玄関床一面にいつもお世話になっている虫こないアースを噴霧する。そして玄関の空間全体にリ◯ッシュルームクリアを噴射した。そして始まる玄関のリ◯ッシュの芳香と生ゴミの異臭と置き型芳香剤の匂いのカクテル。地獄具合が増した。

何はともあれ明日には確実に生ゴミを捨てなければならない。しかし一度目の大学生活と800日を超える無職生活が私に市指定の大型ゴミ袋に余裕がある状態で捨てるという判断を許しはしなかった。そこから始まる断捨離デスマッチ。最終的にボロくなっていたヨガマットも廃棄することにした。

そして何故なのか自分でもわからないが、私の中の好奇心が私に語り掛けてきた。「当の鶏肉の皮はどうなっているのか?」

一度疑問を持ったら(今回は割と葛藤したが)止まらない。

異臭の中ゴミを漁り、当の鶏肉の皮を見つけたが、特に驚くほどの光景は広がっていなかった。それより臭いに耐えられなかった。すかさず全ての廃棄予定のものを突っ込み、口を縛り、市指定の大型ゴミ袋自体にも虫こないアースとリセッシュを噴射した。

全てを終え、風呂で全身を念入りに洗い、明日はコバエ取り用の何かを買いに行こうと決心した。

異様に疲れる狂気の一日だった。

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文系社会人を経ての無職。からの学生。 本業は医学生、副業は無職文系。

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